今年は暖冬だったので花粉の到来も早かったですし、桜の開花も例年よりずいぶんと早く訪れました。
3月の卒業式に桜が見ごろ、という感じでしたね。
残念ながら今年は新型コロナウィルスの影響で、いろいろと厳しい状況のようで、心苦しかったです。
学校の先生からの着付けの依頼も多くいただきました。「例年と同じようにはできないけれど、きちんと式を執り行って卒業生を送り出してあげたい」という先生方の思いに、こちらも身の引き締まる思いでした。
毎年卒業式シーズンは、袴の着付け依頼を多くいただきます。
1月の成人式が終わると、私たち着付け師は袴の着付けを練習し、本番に備えます。
大学生、小学6年生、学校の先生。
それぞれの年齢や体格、立場に合った着付けを心掛けます。
女性の袴の着付けでは、男性と違って後ろのシルエットがなだらかになるように、袴を背中につけます。
(男性は、袴の背板を背中にピタッとつけ、帯結びの部分で段差がはっきりとするようなシルエットにします。)
帯結びによって、そのシルエットがどう変わるのか。
体型によって、より適した帯結びは何か。
緩まない前紐の扱い方とは。
一度じっくり比較検討したいなと思っていたので、ようやく2月の半ばに取り組みました。
納得のいくまで比較検討したおかげで、自分の中ではすっきりしました。
写真の整理に時間がかかり、2月に取り組んだことが、文字にしてまとめるのが4月になってしまいましたが・・・。
まずは袴の前紐の扱いについて。
前紐の、後ろでの掛け方の違いから比較してみます。
帯は袴下帯を使い、帯結びは山ヒダを1つ半とったもの。
(右側から見ると、ヒダがSの字の形になっています。)
一番左の写真が、帯結び(山ヒダを1つ半)だけのもの。
真ん中の写真では、前紐を後ろへ回したら帯結びの上で交差させて前へ戻す伝統的なやり方。
この方法を基本として、他と比較してみます。
←は、後ろへ持ってきた前紐を、帯結びの上で1回ねじっています。
ねじることで、単に交差させただけの基本のやり方よりも、紐がしっかりと固定され、力も入れやすいので緩みにくくなります。
シルエットとしては、横からも、また後ろからも、違いはありませんでした。
←は、帯の上線に沿って後ろへ持ってきた前紐を、そのまま上線の位置で背中でひと結びし、結び目の両脇(=横)で下におろし、左右反対に交差させて前に持って行ったもの。
ひと結びすることで、袴の前紐は緩まずにギュッと引き締まりますが、帯結びを押さえつけていないので、横から見たときに、帯結びがものすごく膨らんで見えます。
やっぱり、帯結びを押さえるのって、必要ですね。
←は前紐を背中でひと結びし、帯結びの上で5回ねじって紐を前に持っていったもの。
これが一番、しっかりと引き締まりました。
紐も緩まないし、横からのシルエットも、膨らんでいない。
ただし、デメリットとして、5回ほど紐をねじるので、その分前へ回す紐が短くなりますから、体格の良い人には不向きです。
<結論・・・前紐の扱い>
標準体型までの人は、ひと結びした後帯結びの上で4~5回ねじって前へ回す。体格の良い人の場合は、ひと結びして1回ねじって前へ回す。
化繊の袴は滑りやすく緩みやすいので、とにかく緩まないように着付けることが大事ですね。